最高価格でのエントリーとは。
ある老舗メーカーからご依頼があり、新商品のコンセプトメイキングのお手伝いをしたときのことです。
長年積み重ねてきた匠の技と丁寧なものづくりで知られているこの企業は、周年記念事業として新店舗をオープンすると同時に新商品を発売することになりました。これまでの商品はもちろん人気があるのですが今の状態を続けていてはブランドとしてマンネリに陥る懸念もあり、抜本的に違う商品を投入することで、商品ライン全体を活性化させることが狙いでした。
しかしこの新商品は、クライアントの既存の最高価格の商品より、さらに高い価格となっていました。作り手の思いを存分に注ぎ込み、贅沢な素材を惜しげもなく使用し、機能性においても競合製品をはるかに凌駕した高品質を追求したことで、通常では考えられないほどの高価格となっていたのです。
市場の平均価格から飛び抜けた、多くの消費者にとって手が出しづらい高額な価格設定をしようとした場合、それが消費者に受け入れられないのではないかという危惧を抱くかもしれません。せっかく商品を市場に出しても、消費者にその価値が伝わらずそっぽを向かれては意味がありません。
そこで私たちは新商品に「市場原理を度外視して、価格が高くなってしまったとしても作り手のこだわりを込めた商品」というポジショニングを取らせることを提案。最高価格という事実が結果的に、お客様が手に取るとうっとりするぐらいの良質さや持っているだけで満足感が得られる上品さにより、さらなる説得力を持たせられると判断したのです。
そして、予てより検討されてきた通り、その最高価格で市場へ投入されることになりました。 新商品は既存の商品との差別化を図ったことで新たなターゲットを取り込み、順調に販売数を伸ばし、またこれまでのターゲットへも企業のものづくりの姿勢を伝えることができたことで、既存の商品は例年を上回る販売ペースを記録しました。